近年、私たちの社会では「多様性」という言葉が、以前にも増して頻繁に使われるようになりました。特に、性的マイノリティ（LGBTQ+）に関する話題は、ニュースやSNSで目にしない日はないほどです。皆さんの周りでも、LGBTQ+の友人や、そういったテーマを扱うドラマや映画に触れる機会が増えてきているのではないでしょうか。
今回の記事では、特にZ世代（1990年代後半から2010年代に生まれた世代）と呼ばれる、皆さんと同世代の若者たちのLGBTQ+に対する意識が、昔と比べてどのように変化してきたのか、具体的なデータをもとに分析していきます。カミングアウトを取り巻く状況や、社会に求められる課題についても、一緒に考えていきましょう。
1. 昔の若者のLGBTQ+観：見えなかった多様性
少し昔を振り返ってみましょう。皆さんの親世代や、さらにその上の世代が若者だった頃、LGBTQ+という言葉は、今ほど一般的ではありませんでした。
2012年に電通ダイバーシティ・ラボが行った調査によると、「LGBT」という言葉を知っている人の割合は、20代でも約4割にとどまっていました。さらに、「自分とは関係ない」と考える人が多かったり、「気持ち悪い」といった偏見を持つ人も少なくありませんでした。
当時のメディアでは、LGBTQ+は「特殊な存在」として扱われることが多く、ドラマや映画でもステレオタイプな表現が目立ちました。学校の教育現場でも、LGBTQ+について学ぶ機会はほとんどなかったため、多くの若者はLGBTQ+について理解を深める機会がなかったのです。
カミングアウトという言葉も、当時は今よりもずっと重い意味を持っていました。カミングアウトをすることは、「周囲から受け入れられないかもしれない」という大きなリスクを伴い、多くの当事者は、自分のセクシュアリティやジェンダー・アイデンティティを隠して生きていくことを余儀なくされていたのです。
2. 現在のZ世代のLGBTQ+観：理解と共感の広がり
しかし、今、皆さんの世代であるZ世代のLGBTQ+観は、大きく変化しています。
2020年に実施された内閣府の調査では、20代の約8割がLGBTQ+という言葉を知っており、さらに約6割が「LGBTQ+の人々と積極的に関わりたい」と回答しています。
また、2023年に実施された別の調査では、Z世代の約7割が「LGBTQ+の人々を差別することは良くない」と答えています。これらのデータは、Z世代がLGBTQ+に対して、以前の世代よりも圧倒的に理解を示し、共感していることを示しています。
背景には、SNSの普及が大きく影響しています。当事者の発信が可視化されやすくなったことで、LGBTQ+は特別な存在ではなく、身近な存在として認識されるようになりました。また、メディアでもLGBTQ+をテーマにした作品が増え、多様な生き方を知る機会が増えたことも、理解の促進に繋がっています。
3. カミングアウトに対する考え方の変化：自己開示の日常へ
カミングアウトに対する考え方も、大きく変わってきています。
かつては、カミングアウトは「秘密を打ち明ける」というネガティブな意味合いが強かったのですが、Z世代の間では、「自分らしく生きるための自己開示」として、ポジティブに捉えられるようになってきています。
もちろん、カミングアウトは決して簡単なことではありません。家族や友人、学校や職場での理解を得られなければ、孤立したり、差別を受けるリスクは依然として存在します。しかし、それでも、以前に比べるとカミングアウトに対するハードルは確実に下がってきており、少しずつではありますが、カミングアウトが「日常」になりつつあると言えるでしょう。
実際、学校や職場においても、カミングアウトをする人が増えてきています。当事者が声を上げることで、周りの人々の意識も変化し、より多様性を認め合う社会へと近づきつつあります。
4. 変化の要因分析：可視化と学びの力
なぜ、Z世代のLGBTQ+観はここまで大きく変化したのでしょうか？その要因を詳しく見ていきましょう。
- 情報技術の発達（SNS）：
- SNSの普及により、LGBTQ+当事者の声が広く届くようになりました。
- 多様なロールモデルを目にすることで、LGBTQ+に対する理解が進みました。
- 当事者同士が繋がり、コミュニティを形成することも容易になりました。
- 学校教育：
- 学校の授業でLGBTQ+に関するテーマが扱われる機会が増えました。
- 教員向けの研修も実施され、教育現場での理解が進んでいます。
- LGBTQ+に関する知識を学ぶことで、偏見や差別意識を減らすことができました。
- メディアの影響：
- 映画、ドラマ、漫画、音楽など、様々なジャンルでLGBTQ+をテーマにした作品が登場しています。
- これらの作品を通して、多様な生き方や価値観を知り、理解を深めることができました。
- メディアがLGBTQ+を「普通のこと」として扱うようになったことも、大きな変化です。
- 社会的な動き：
- 同性婚訴訟や、企業のダイバーシティ＆インクルージョンへの取り組みなど、社会全体でLGBTQ+への理解を深めようとする動きが活発化しています。
- プライドパレードなどのイベントを通して、当事者だけでなく、アライ（支援者）と呼ばれる人々も増えてきました。
これらの要因が複雑に絡み合い、Z世代のLGBTQ+観は、昔とは比べ物にならないほど変化してきたのです。
5. 課題と今後の展望：よりインクルーシブな社会へ
Z世代のLGBTQ+観は大きく変化してきましたが、課題がなくなったわけではありません。
依然として、差別や偏見は存在します。SNS上での誹謗中傷、学校や職場でのハラスメント、カミングアウト後の不利益など、当事者が抱える困難は、まだまだ多く存在します。また、法律や制度が整っていないために、当事者が不利益を被るケースも少なくありません。
これらの課題を解決していくためには、社会全体で更なる理解を深め、偏見をなくすための努力が必要です。学校教育やメディア、企業など、各方面での取り組みが重要になります。
皆さんの世代は、まさにその変革の中心にいます。多様性を認め合い、互いを尊重し合える社会を作るために、一人ひとりができることを考え、行動していくことが大切です。
6. まとめ：多様な個性が輝く未来へ
今回の記事では、Z世代のLGBTQ+観が、どのように変化してきたのかを、具体的なデータをもとに分析しました。昔は「見えなかった」多様性が、今は可視化され、多くの人が理解を示し始めています。
しかし、この変化はまだ始まったばかりです。よりインクルーシブな社会を実現するためには、今後も課題を解決していく必要があります。
私たち一人ひとりが、多様な個性が輝く未来を築いていくために、これからも学び続け、行動していきましょう。